「練習量とテニスの実力が比例していない」
これに当てはまる人が日本のテニス人口の中では多いです。私も元々その1人で、草トーなどで優勝できるレベルにテニスが上達したのは社会人になってからでした。特に中学・高校から硬式テニスを続けていて「人1倍練習しているのにテニスが上達しない」と悩んでいる人は意外に多いのです。
しかしその反面、
「現役時代(学生時代)は勝てなかったけど、社会人になってからテニスが上達して勝てるようになった」
という人が少なからずいらっしゃいます。学生時代と比べればテニスできる時間は減ったにも関わらず、テニスが上達する人達。ある意味学生時代とは反対の意味で「練習量が実力と比例しなくなる」状態になっています。もちろんこれは良い意味で、です。
そこで今回は、学生時代は一度もレギュラーになれず引退したものの、社会人になってからテニスが劇的に上達してオープンレベルの大会で優勝したKさん(20代後半)に直接話を伺ってみました。Kさんは一度テニスのために会社を休むという暴挙を起こすテニスバカです。(これは流石に真似してはいけません)
Kさんは学生時代、週4でテニスに打ち込んでいたのに対し、社会人では週に1回1日3時間程度の練習と、圧倒的に練習時間は減ったにも関わらずそれに反比例してテニスを上達させた成功事例の1人です。
今回はそんなKさんに、「社会人になってからテニスが劇的に上達した要因」について話を聞いてみました。
確かに私も含めた社会人プレーヤーは、プロでもない限りテニスが自分の生活の中心になることはありません。どこまでいっても趣味の領域を抜け出すことはないでしょう。ですがテニスを続けている以上、誰だって試合をするなら勝ちたいと思うはずです。
今回は体験談が中心なので、同じようにオープンなどの大会で優勝を狙いたいあなたは参考にしてみてください。
社会人になってテニスが上達した1番の要因は、メンタル面にあった
まずはKさんが思う、テニスが上達した1番の要因を教えてください
Kさん:
そうですね。社会人になってからフォームなどの技術面も多少手を加えましたが、学生時代と比べて1番大きく変わったのはメンタル面だと思っています。社会人になった今の方が学生のときよりも良くも悪くも気楽に、リラックスしてテニスができています。
精神面が変わってリラックスできるようになったのは何故ですか?
Kさん:
学生時代は一応体育会だったこともあるので、団体戦に出るレギュラーと出ないノンレギュラーに限らず、「体育会である以上、勝たなければならない」というプレッシャーが全員にあったと思います。
少なくとも私はそのプレッシャーを持っていて、結局レギュラーになることはできませんでしたが、部員の中でもテニスの練習は真面目に取り組んでいるつもりでした。例えば「体育会なんだから、サークルの人に負けるのは恥ずかしい」というプレッシャーもありましたね。
実際に私の所属していた部活ではそういう風潮があって、サークルの人と直接テニスをすることはありませんでしたが、プレッシャーと言うか、良くも悪くもプライドが高くなってしまっていたんだと思います。
逆に社会人になってからそういったプレッシャーから解放されたので、すごいのびのびプレーできるようになりました。社会人のテニスは良くも悪くも「絶対に達成しなければならない明確な目標」がなかったので。
学生時代は団体戦、リーグ戦で勝って上部リーグに昇格する為に、学生時代の時間や情熱を注ぎましたが、今ではテニスは趣味として週末にプレーしているので、純粋にテニスを楽しむことができているのが大きいのかなと。
少し抽象的にはなっちゃうんですけど、つまりは「精神的な意味で肩の力を抜いてテニスできるようになった」のが、社会人になってからテニスが上達した要因の1つだと思います。
社会人なってテニスが上達した際、技術面での大きな変化は?
社会人になってから1番大きく変わったのはメンタル面だというKさん。次に、技術面について意識していたことを伺ってみました。
技術面も多少いじったとおっしゃていましたが、具体的に何を変えましたか?
Kさん:
まずはグリップの握りを変えましたね。学生時代はほとんどリバースに近い、部員から”異常”と言われるぐらい厚い握りのフォアハンドだったんですけど、当時はこの握りが自分に合ってると思ってたんですよね。
一応上達に悩んでいたときに握り方を変えたりして色々試行錯誤したんですけど、「試合が近いから」とか適当に言い訳して結局試すたびに厚い握りに戻っちゃってました(笑)。
ただ、厚い握りだとショートラリーとか、自分より上手くない人とラリーする時に力をコントロールするのが難しいんですよね。社会人になってから入ったサークルでは今までの打ち方だとラリーが続かなかったので、良い機会だと思ってコンチネンタルで打つ練習を始めました。
最初は強い球を打てなくてストレスも感じていたんですけど、コンチネンタルグリップに慣れてくると、特に女性相手だとラリーが全然ミスしなくなってきたので、しばらくの間は草トーでもコンチネンタルで打つようになってました。
コンチネンタルで打つ練習が、テニスの上達に繋がったのでは?
Kさん:
だと思います。ただ、しばらくの間は試合では全然勝てませんでした。ダブルスが多かったんですけど、確かにミスは減ったものの、球はスゴイ弱くて、サーブアンドボレーヤ―の平行陣で来られるとチャンスボールばっか上げて、完全にお手上げ状態でした。でも組んでくれたペアには本当に申し訳ないと思いつつも、コンチネンタルで打ち続けました(笑)。
強打できないことに悩んでいたら、ダブルスのペアに「少しだけ厚く握ってみたら?」と言われたので、言われた通り学生時代の時ほど厚過ぎず、コンチネンタルより少しだけ厚く握って打ってみました。今でいう「セミウエスタングリップ」に該当すると思うんですけど。
そしたらストロークも安定してそこそこ強打もできるようになって、「テニスめちゃくちゃ楽しいな」って思いました(笑)。一応学生時代もセミウエスタンで試したことがあるんですけど、その時上手くいかなかったのは「単なる練習不足だった」と、この時に思いました。
セミウエスタングリップで打てるようになってからこころなしかネットプレーも安定するようになってきて、結果的に草トーでの勝率も上がりました。
コンチネンタルグリップでどれぐらいの期間練習したら打てるようになりました?
Kさん:
僕の場合期間と言うより、今でもコンチネンタルグリップで打つ練習はしています。特に自分より下の実力の人相手には、試合でもコンチネンタルグリップでラリーするように心掛けてますね。
参考になるかわからないんですけど、コンチネンタルで2ヵ月、週1のペースでテニスしてて、2カ月後にセミウエスタンで試してみたら上手く打てるようになってたと思います。もちろんまだ全然下手くそなんですけど、テニスの技術面は確実に上達しました。
試合(ダブルス)で優勝できた要因と、そのレベルまでテニスが上達した感想
オープンで優勝できた要因を教えてください
Kさん:
そうですね。いくら自分が上達したといっても優勝を争うとなると他の選手はみんな基本的に自分より技術レベルの高い人ばかりなので、打ち過ぎないように意識してました。その時負けるパターンは、序盤で自分の強打でごり押しして、途中で自分が崩れて自滅して負けるのが多かったので。
当たり前のことだとは思うんですけど、ダブルスなので、リターンもただ強打するんじゃなくて相手の足元に沈むように回転をかけたり、ダブルスの動き方も前以てペアと打ち合わせしてポーチに出たりサイドチェンジしたり、戦略としては基本的なことを徹底してました。
多分学生時代はそういった”基本的なこと”もできてなかったから勝てなかったんだと、優勝してから思いました。
優勝できるレベルまで上り詰めた感想を教えてください
Kさん:
まぁ草トーなので、全国レベルの人なんか出てこない小さな勝利だったんですけど(笑)。でもそれが自分のテニス人生で初優勝だったので、嬉しかったです。大袈裟かもしれないんですけど、「テニスを続けてきて良かったな」と心から思えました。
もちろん自分なんかより上手い人もたくさんいると思うので、身体が動く限りはテニスを頑張ろうと思ってます。仕事も頑張りつつも少しずつ出る大会のレベルを上げていって、ハイレベルな大会で優勝できるように頑張ります。
【テニスの上達に悩むあなたへ】成功事例からの一言
Kさん:
僕は中学2年からテニスを始めたんですけど、中学から大学までは一度もレギュラーになれず、個人戦も1回戦負けばかりでした。でもテニスはずっと好きだったので社会人になってからも続けてきて、ようやく成果らしい成果を上げるまでにテニスを上達させることができました。
ただ、気負い過ぎるのも良くないと思います。のびのび、「純粋にテニスを楽しむ気持ち」はすごく大事なんだなと、上達してから実感しました。テニスの上達を諦めるわけではないんですけど、結果を気にせずテニスを楽しむ気持ちを常に持って練習するといいんじゃないかなと。
大層なアドバイスはできませんが、技術面でいうと自分の場合はコンチネンタルで打てるようになったのが大きいと思います。ラケットの握り方はそれぞれなんですけど、サーブやネットプレーでは薄い握りが主流だと思うので、コンチネンタルグリップで、まずは弱くてもいいのでラリーを続ける練習をして、慣れてきたら少し厚く握ってみると良い球が打てると思います。
僕から言えるのは、テニスを諦めず、かつ気負い過ぎず、少しだけ肩の力を抜いてテニスをしてみてはいかがでしょうか。ということです。これからも一緒に頑張りましょう。
Kさん、ありがとうございました!