多くのプレイヤーが、フォアハンドよりもバックハンドに苦手意識を持っています。テニススクールの上級クラスでも、フォアハンドはバコバコ打つけどバックハンドが極端に打てないという方もそこまで珍しくはありません。
また、ストロークが上達しない、不安定な方もフォアハンドよりバックハンドの方が脆い傾向があります。打てたとしても、試合では角度をつけられずセンターにボールが寄ってしまい叩かれ放題、というパターンも後を絶ちません。
バックハンドを上達させることができれば、テニスの幅も大幅に広がります。実際にラファエル・ナダル選手も以前と比較してバックハンドを強化したことによって、攻撃力が圧倒的にアップしています。全仏では見事に10度目の優勝を達成しました。それぐらいバックハンドは重要なショットであり、レベルが上がれば上がるほど差が顕著に出ます。
そこで今回はバックハンドを上達させる為のヒントをご紹介致します。スライスで逃げずに、バックハンドでもしっかり振り切って打ちたい方は、これからお伝えすることをお役に立てていただければ幸いです。
【テニスのバックハンドを安定させるポイント1】まずは下半身を安定させる
両手打ちの場合、「左手主体で打ちましょう!」、「腕の力を抜いて!」といったアドバイスが多いです。力を抜くことは大事ですが、左手主体で打つべきかどうかは一概に正しいとは言えないと考えます。
私自身バックハンドでの打ち合いを得意としていますが、「左手主体で打とう」と意識したことはありません。どちらの手を主体にするかは人によって異なると言えます。ですが、下半身は全員に共通して安定させる必要があります。
バックハンドが上達しない人は多くの場合、ラケットワークや手の動きを意識するあまりに下半身が疎かになりがちです。つまり、棒立ちになっているのです。バックハンドを安定させるために、まずは重心がしっかり落とせているかを確認してみましょう。
両手打ちバックハンドはその特性上、フォアハンドと比較して身体が早く開くのを防止することができます。その分、身体の捻ることによって生じるパワーを利用しやすいと言えます。ただ、そこで下半身が安定していなければボールにパワーは伝わらず、弱弱しいショットになってしまうのです。
手打ちでもスピードを出すことはできても、回転をかけることが難しくなります。なのでまずは、重心を落として下半身を安定させることを意識しましょう。自分では意識しているつもりでも、自分のテニスを動画などで観てみると自分の想像以上に棒立ちになっているケースが多いので注意が必要です。
ストロークの基本の構えとして、足のスタンスを肩幅の2倍ぐらい広く取ることで、重心を楽に落とすことが可能です。
【テニスのバックハンドを安定させるポイント2】フィニッシュは肩の上に
どんな打ち方でも、基本的にバックハンドはフィニッシュを肩の上まで振り切った方が安定します。多くのトッププロはフラット系の当たりが主流なので打球スピードも速いですが、決してスピンをかけていないわけではありません。安定させるには回転をかけることが不可欠です。
連続写真や動画を観ればわかりますが、両手打ちのプロは基本的にラケットを肩の上までしっかり振り切って打っています。ラケットワークが大剣のようにダイナミックなジョコビッチは非常にわかりやすいです。
両手打ちバックハンドはフィニッシュの位置が低いと、身体の構造上、最後まで振り切ることができないのです。自分の元へ飛んでくるボールの軌道は常に変化していますが、フィニッシュの位置を一定にすることで安定して回転をかけることができるのです。
自分のバックハンドを目がけて速いボールが飛んできた場合は、面に当てるだけでもボールは楽に返すことができます。しかし、比較的勢いがない、飛んでこないボールをしっかり打ち返すときこそ、回転が重要になります。
特にテニスの上達で悩む初中級者の方は、上級者の速いボールは返せるけど試合になると安定しなくなるという方は非常に多いです。速いボールは相手のパワーをそのまま利用できるのですが、飛んでこないボールを正確に処理するには、自分で回転と威力を生み出す必要があります。
後は下半身を使って体重をしっかりボールに乗せて打つことで、バックハンドでも重みのある、より攻撃的なショットを打てるようになります。
【テニスのバックハンドを安定させるポイント3】打点の位置を一定にする
某テニス漫画の「〇〇ゾーン」のように、相手の打球を自分の打ちやすい方へと導くのは至難の業です。ただ、自分が打つ打点に限っては、自らの意思で調整することができるのです。つまり、自分が打つタイミングです。
フォアハンドの場合は利き腕の自由度が高いので、打点が乱れても感覚である程度調整することが可能です。しかし、両手打ちバックハンドの場合は腕の動きがある程度制限されるので、自分の打ちやすい打点を定めた方が安定すると言えます。
チャンスボールを打ち込む際は高く捉えることに越したことはありません。ただ、ベースラインでの打ち合いでミスせず繋げることを目的とした場合、自分にとって無理なく打てる、最もミスする確率が低い最適な打点を見つける必要があります。
最適な打点は、グリップの握りなどによっても変化するので一概に言うことはできません。強いていうのであれば、自分が違和感なく最後までラケットを振り切れる、フィーリングの合う打点が理想です。理屈で説明できる部分ではないので、壁打ちなどでチェックしてみましょう。
上級者であればあるほど、バックハンドでも自分の打点やリズムを乱さずに打ち続けることができるのです。
【テニスのバックハンドを安定させるポイント4】テイクバックはコンパクトに
「バックハンドはしっかり肩を入れて!」、「肩越しにボールを見て!」というアドバイスをよく耳にしますが、このアドバイスは誤解を生む恐れがあります。誤解とは何かというと、「肩を入れる=テイクバックを大きくする」ということです。
バックハンドにおいて身体の捻りを使ってボールを打つためにも、肩を入れることは大切です。ですが、まずバックハンドを一定レベルまで上達させたい場合、テイクバックは小さくした方が比較的楽に打てるのです。
テイクバックを大きくすると、ラケットの振り始め~インパクトまでの距離が長くなってしまう分、タイミングを取るのが難しくなってしまうのです。また、相手のショットが早ければ振り遅れてしまうリスクも高まります。
テニスは基本的に、ボールがラケットの真ん中に当たりさえすれば飛んでいくものです。なので、「ボールが飛ばない原因はテイクバックが小さいから」というわけではありません。一番の原因としては下半身を使えてない場合が多いと言えます。
【テニスのバックハンドを安定させるポイント5】手首を柔らかくする
ダブルバックハンドで回転がかからないという方は、手首が力んでいる可能性が高いです。フォアハンドも同様ですが、全てのショットは手首の返しが鋭ければ回転もしっかりかかるようになります。
もちろん手打ちはいけませんが、テニスにおいて手首の使い方はかなり重要です。人によっては、手首の使い方1つでテニスは驚くほど上達します。手首が力んでいると、あらゆるショットの回転が甘く、中途半端なショットになります。
手首は力を入れて固定せずグニャグニャになるようにできる限りリラックスさせましょう。素振りだと違和感を感じたり、ラケットの振り抜きが悪く、スイングスピードが遅いと感じることもあるかと思います。
ですが素振りとはあくまで素振り。実際にボールを打つのとはわけが違います。手首をリラックスして、インパクトのときにラケットヘッドが落ちていれば、しっかり回転がかかりハードヒットしてもコートに収まるようになるのです。
まとめ
【両手打ちバックハンドを上達させるポイント】
・下半身を使う(重心をしっかり落として土台を安定させる)
・フィニッシュは肩の上(肩の上までしっかり振り切って回転をかける)
・打点の位置を一定にする(自分にとって最適な打点を見つける)
・テイクバックはコンパクトに(タイミングを取るのを楽にする)
・手首を柔らかくして、回転をかけて打つ
上記5点をすべて同時に意識するのは不可能です。また、人によっては既に抑えてる要素と抑えてない要素があるかと思います。1つずつ実践してみてその中でも自分にとってフィーリングの合う最適なポイントだけを取り入れることで、テニスの上達効率はアップします。お役に立てて頂ければ幸いです。
ただ、最終的に反復練習してすべての要素を身につけて、苦手なショットは克服するべきだと言えます。苦手なショットを克服するのもまたテニス上達の1つです。